『荘子 内篇』(岩波文庫)書評——原典に入るなら、まずここから
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: 荘子の原典に入るなら、まずこの一冊です。中国哲学の泰斗・金谷治が、荘子の核である内篇を、訓読・現代語訳・注の三点セットで丁寧に導きます。全四冊のうちの第一冊で、いちばん重要な内篇(逍遥遊・斉物論ほか)だけを先に読み切れるのが利点。入門で地図を得た人が、荘子の言葉そのものに触れる最初の原典として最適です。
- 書名
- 荘子 第一冊 内篇
- 訳注
- 金谷 治
- 出版社
- 岩波文庫
- 形式
- 原典訳注(全4冊の第1冊)
- 難易度
- 中級 ★★☆ ——訳注は親切だが、原典の分量とリズムに慣れが要る
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どんな本か——3行で
『荘子』は、内篇・外篇・雑篇の三部からなる古代中国の思想書です。岩波文庫版はこれを全四冊に分け、本書はその第一冊として、思想の中心とされる内篇七篇を収めます。訳注者の金谷治は『論語』『老子』なども手がけた中国思想研究の大家で、本書では原文の訓読、平易な現代語訳、そして語句や背景を説く注が一体になっています。
核心——内篇にこそ荘子の思想の中心がある
荘子研究では、荘子その人の思想がもっとも色濃いのは内篇だとされます。「逍遥遊」(世界の外へ遊びに出る自由)に始まり、「斉物論」(万物斉同——あらゆる対立を等しく観る)、「養生主」「人間世」「徳充符」「大宗師」「応帝王」と続く七篇に、荘子の核心が詰まっています。本書一冊で、この最重要部分を原典として読み通せるのが最大の価値です。
大きな鳥は九万里の高さまで昇ってから南の海をめざす——小さな鳥はそれを笑うが、大と小、どちらの生き方が正しいと決められるだろうか。(「逍遥遊」冒頭の寓話について、編集部がまとめた大意)
——荘子「逍遥遊」篇・大鵬の寓話の主題(編集部による要約・大意)
金谷訳は、奇想天外な寓話を土台に置きながらも、注で思想的な背景を補うため、「話は面白いが何を意味するのか」という原典特有の戸惑いを、その場で解消しながら進めます。
読みどころ3点
1. 訓読・現代語訳・注の三点セット
原文の訓読を味わいたい人にも、意味だけ手早くつかみたい人にも対応できる構成です。まず現代語訳で筋を追い、気になった箇所だけ訓読と注に戻る、という読み方ができます。
2. 内篇だけを先に読み切れる分冊
全篇は大部ですが、本書は内篇のみ。荘子で最も重要な部分を、無理なく一冊で完走できます。ここで手ごたえを得てから外篇・雑篇へ進むかを決められるのが合理的です。
3. 定番としての信頼性
金谷治の訳注は長く読み継がれてきた定番で、荘子入門後の「最初の原典」として広く推奨されてきました。迷ったらこれを選んで外しません。
挫折ポイントと読み方
挫折の原因は主に二つです。一つは予備知識ゼロでいきなり開くこと。逍遥遊や万物斉同という枠組みを知らないと、寓話が脈絡なく感じられます。だから当サイトは入門解説を先に置きます。もう一つは頭から一字一句を全部理解しようとすること。荘子は反復と飛躍の多いテキストで、通読よりも、心に留まった篇や寓話をかみしめる読み方が向いています。まず現代語訳で内篇七篇を一周し、二周目に訓読と注へ降りていくのがおすすめです。全篇まで読みたくなったら、別訳の福永光司訳や池田知久の全訳が続きを引き受けます。
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