『読書について』書評——本を売るサイトが「読書は害だ」という本を勧める理由
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: 原典デビューに最適な一冊。160頁、アフォリズム調、そして現代のSNS・情報過多への処方箋として読める普遍性。「たくさん読んでいるのに、何も残っていない気がする」人にこそ効きます。
- 書名
- 読書について 他二篇(「思索」「著作と文体」併録)
- 著者
- ショウペンハウエル(斎藤忍随 訳)
- 出版社
- 岩波文庫(1960年初刊・1983年改版)
- 分量
- 160頁
- 難易度
- 入門 ★☆☆ ——最薄の原典
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どんな本か——3行で
『付録と補遺』から「思索」「著作と文体」「読書について」の三篇を収めたエッセイ集です。主題は一貫して、読む・書く・考えるの正しい関係。多読の害、悪文の見分け方、自分の頭で考えることの困難と価値が、容赦のない実例とともに論じられます。
「読書とは他人にものを考えてもらうこと」の真意
読書とは他人にものを考えてもらうことである。
——ショウペンハウエル『読書について 他二篇』斎藤忍随訳(岩波文庫)「読書について」より
この一文だけが独り歩きしがちですが、本書は「本を読むな」という本ではありません。彼が攻撃するのは、考える手間を省くための読書——次から次へ読み流して、読んだ冊数を思索の代わりにする態度です。彼自身が古典の徹底した読み手であったことは、本書の随所に表れる引用の質からも明らかです。
つまり主張はこうです。読書は思索の材料にすぎない。材料を仕入れ続けるだけで自分で調理しないなら、それは知性の放棄である——。「積読と流し読みで教養を積んだ気になる」という現代の習慣を、160年前にここまで正確に撃ち抜いた文章はほかにありません。
読みどころ3点
1. 「思索」——本書のいちばん深い部分
表題作より、冒頭の「思索」が本体だと編集室は考えています。自分の頭で考え抜いた知識と、借り物の知識との違いが、これ以上ないほど明確に述べられます。ここを読むと、残り二篇の辛辣さが単なる毒舌ではないことがわかります。
2. 「著作と文体」——文章を書くすべての人へ
難解ぶった悪文への攻撃は痛快そのもの。「わかりにくく書く者は、まず自分がわかっていない」という趣旨の指摘は、書く仕事をしている人ほど耳が痛いはずです。
3. 悪書を読まないという積極的選択
人生は短く、良書だけでも読み切れない。ゆえに「読まない本を決めること」こそ読書術の核心だ、という議論は、新刊が洪水のように出る現代でいっそう説得力を増しています。
つまずきやすい点
訳は1960年のもので、漢語が多くやや硬い印象を受けるかもしれません(改版で読みやすくなっています)。また、当時のドイツ文壇への当てこすりが頻出しますが、固有名詞は読み飛ばして構いません。議論の本体は固有名詞と無関係に成立しています。
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