『社会契約論』書評——「一般意志」が、正しい政治をつくる
★★★★★5 / 5.0(編集室評価)
結論: ルソーを一冊だけ読むなら、これです。「人間は自由なものとして生まれた、しかもいたるところで鎖につながれている」——この一文から始まり、「一般意志」による正当な政治の原理を説く近代民主主義の古典。人民主権の思想の源流を本人の言葉で読めます。岩波文庫の定訳で、抽象的ながら射程は絶大。棚の中心の一冊です。
どんな本か——3行で
本書は、正当な政治的権威はどこから生まれるのかを問うたルソーの代表作です。人々が自由と平等を保ちながら共同体をつくるにはどうすればよいか——その答えとしてルソーは「社会契約」を構想し、各人が自分の権利を共同体全体に譲り渡すことで、かえって自由が保たれると論じます。その共同体の意志が、有名な「一般意志」です。
核心——「一般意志」という難所と核心
本書の核心にして最大の難所が「一般意志(volonté générale)」です。それは全員の私的な欲望の寄せ集め(=全体意志)ではなく、共同体全体の共通の利益を目指す意志だとされます。多数決の結果とも、支配者の意志とも違う。この抽象性こそが本書を難しくしていますが、同時に、権力の正しさを「みんなの意志」に根拠づけるという、近代民主主義の中心思想を打ち立てた点でもあります。人民主権、法の一般性、市民宗教——後の政治思想が延々と論じ続けるテーマが、ここに凝縮されています。抽象的な議論の背後で、ルソーが「支配なき秩序は可能か」という切実な問いと格闘していることを見失わなければ、本書は一気に読めます。
読みどころ3点
1. 人民主権の原点
権力の正当性を人民の意志に置く発想が、近代民主主義の出発点として読めます。
2. 「一般意志」の射程
全体意志との違いを押さえると、後の政治思想の論争がすべて見通せます。
3. 名文の力
冒頭の一文をはじめ、警句的な文章が多く、抽象論のなかにも読ませる力があります。
注意点
二点。第一に、本書は抽象度が高く、いきなり読むと「一般意志」の議論で立ち止まりがちです。先に『人間不平等起源論』で文明批判の問題意識をつかんでおくと、ぐっと読みやすくなります。第二に、本書には光文社古典新訳文庫(中山元訳)版もあります。同じ『社会契約論』の別訳なので、両方を買う必要はありません。読みやすさなら光文社、定番なら岩波と、どちらか一方を選んでください。
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