『一般意志2.0』書評——「一般意志」は、情報社会でどう甦るか
★★★★☆4 / 5.0(編集室評価)
結論: ルソーを現代の問題として考えたい人へ。哲学者・東浩紀が、ルソーの「一般意志」を情報社会・ビッグデータの条件下で大胆に読み替え、新しい民主主義を構想する現代思想の書です。ルソー、フロイト、グーグルを結びつける発想は刺激的で、古典が「いま」につながる感覚を与えてくれます。原典への関心を掻き立てる、もう一つの入口です。
どんな本か——3行で
本書は、批評家・哲学者の東浩紀が、ルソーの「一般意志」概念を出発点に、情報テクノロジーが浸透した現代における新しい民主主義の可能性を論じた著作です。熟議に基づく従来の民主主義の限界を指摘し、人々の無意識の欲望がデータとして可視化される時代に、「一般意志2.0」とも呼ぶべき統治の形はありうるか——ルソー、フロイト、そしてグーグルを結びつけながら構想します。
核心——古典を、現代の道具として使う
本書の魅力は、ルソーの難解な「一般意志」を、現代の情報社会という具体的な文脈で読み替えてみせるところにあります。東は、一般意志を「熟議によって作られる合意」ではなく、むしろ人々の欲望や行動がデータとして集積された「無意識の総体」に近いものとして捉え直します。これはルソー解釈として一つの大胆な提案であり、賛否はあるにせよ、古典が現代の問題を考える道具になりうることを鮮やかに示します。原典を読む前に本書に触れると、「一般意志とは結局何なのか」という問いを自分ごととして抱けるので、後で『社会契約論』を読むときの動機づけになります。
読みどころ3点
1. 古典と現代がつながる
ルソーの概念が情報社会論と結びつき、古典を読む意味が実感できます。
2. 刺激的な問題提起
熟議民主主義の限界という論点は、現代の政治を考える手がかりになります。
3. 原典への動機づけ
「一般意志とは何か」を問いたくなり、『社会契約論』を読む意欲が湧きます。
注意点
二点。第一に、本書はルソー解釈の一つの提案であり、標準的な解説書ではありません。ルソー自身の議論は必ず原典で確かめてください。第二に、著者独自の現代思想の色が濃いので、「これがルソーの定説」と受け取らないこと。あくまで古典を現代につなぐ刺激的な入口として楽しむのが正しい読み方です。
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