『社会契約論/ジュネーヴ草稿』書評——決定稿と、その手前
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: 読みやすい新訳で、あるいは一歩踏み込んで読みたい人へ。『社会契約論』の中山元による現代的な新訳に、その初期形である「ジュネーヴ草稿」を併録した一冊です。決定稿と草稿を読み比べると、「一般意志」の思想がどう練り上げられたかが見えてきます。岩波版と同じ『社会契約論』の別訳なので、読みやすさ重視ならこちらを選ぶ手もあります。
どんな本か——3行で
本書は、ルソーの代表作『社会契約論』を中山元が現代語で訳し、あわせてその初期草稿である「ジュネーヴ草稿」を収めた版です。決定稿だけでなく、そこに至る前段階のテクストを併読できるのが特長で、詳しい訳注と解説がルソーの議論の背景を補います。読みやすさと、思想の成立過程への踏み込みを両立させた一冊です。
核心——草稿が見せる、思想の生成
完成した『社会契約論』は、磨き上げられているぶん、どこか天下り的に見えることがあります。本書の価値は、「ジュネーヴ草稿」という手前のテクストを併録することで、ルソーが何を書き、何を削り、どう考え直したかが見える点にあります。とりわけ、草稿には決定稿で姿を消した議論(人類一般の社会性をめぐる箇所など)が残っており、「一般意志」の構想が一直線ではなく試行錯誤の末に到達されたことがわかります。中山元の訳は平明で、はじめて『社会契約論』を読む人にも向きます。決定稿だけで十分な人はこの一冊を、思想の生成に関心がある人は草稿まで——目的に応じて使い分けられます。
読みどころ3点
1. 読みやすい新訳
中山元の現代語訳と豊富な訳注で、抽象的な議論がぐっと近づきます。
2. 草稿併録の価値
決定稿との違いから、「一般意志」がどう練られたかを追体験できます。
3. 解説の充実
背景と論点の解説が手厚く、独力での理解を支えてくれます。
注意点
重要な点を一つ。本書に収める『社会契約論』は、岩波文庫版と同じ著作の別訳です。両方を買う必要はありません。定番の格調なら岩波(桑原・前川訳)、読みやすさと草稿・訳注の手厚さなら本書(中山元訳)——どちらか一方を選んでください。もう一点、草稿はやや専門的なので、まず決定稿を読み、余力があれば草稿に進むのが無理のない順序です。
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