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『哲学と宗教全史』書評——バラバラの知識が、一枚の地図になる

2026-07-07|哲学の本棚 編集室

★★★★★4.3 / 5.0(編集室評価)

結論: 個別の入門書で面白くなった人の「2冊目以降」として推薦します。古代ギリシャから現代まで、西洋と東洋、哲学と宗教を分けずに一本の物語として通す通史。ソクラテスとブッダと孔子がほぼ同時代人だと一枚の年表で見る体験は、知識の置き場所を根本から変えます。

哲学と宗教全史(装丁風イメージ・当サイト作成)
書名
哲学と宗教全史
著者
出口治明
出版社
ダイヤモンド社(2019年)
形式
通史・大部(年表・人物図版つき)
難易度
中級 ★★☆ ——文章は平易・分量が多い・約10時間

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どんな本か——3行で

ライフネット生命の創業者にして立命館アジア太平洋大学(APU)の学長を務めた出口治明が、生涯1万冊超の読書を土台に書いた、哲学と宗教の3000年通史です。古代ギリシャ哲学、仏教・儒教・道教、キリスト教とイスラム、ルネサンスから近代哲学、20世紀思想まで——普通なら別々の本になる領域を、100点超の人物図版と巻頭の大年表とともに一冊で通します。

核心——哲学と宗教を分けない

本書の最大の主張は、構成そのものに埋め込まれています。哲学と宗教は、同じ問いへの二つの答え方である——世界はどうしてできたのか、人はどう生きるべきか、死んだらどうなるのか。

この視点に立つと、哲学史の教科書では脇役になる宗教——キリスト教のスコラ学、イスラムの哲学者たち、仏教の論理学——が本流に戻ってきます。デカルトもカントも、神学との格闘の中で仕事をした人です。宗教を省いた哲学史は、実は半分の地図でしかない。ビジネス界出身の著者らしい「実際どうだったのか」という現場感覚が、学問の縦割りを気持ちよく無視して、知の全体像を描き直します。

読みどころ3点

1. 枢軸の時代——ソクラテス・ブッダ・孔子の同時代性

紀元前5世紀前後、ギリシャ・インド・中国でほぼ同時に人類の思考が跳躍した——ヤスパースの言う「枢軸の時代」を、本書は物語の起点に置きます。東西を分けない本書の構成が、ここで最初の威力を発揮します。

2. イスラム哲学の再評価

アリストテレスを保存し、ヨーロッパに返したイスラム世界の役割。西洋中心の哲学史で抜け落ちる1000年が、きちんと物語に組み込まれています。

3. 巻頭の大年表と人物図版

3000年・東西の思想家が一枚に並ぶ年表は、それ自体が本書の要約です。読了後も「あの人はいつの人だっけ」と開き直す、地図としての実用性があります。

注意点

二点。第一に、約500頁の大部です。通読には体力が要るので、先に個別の面白い本(『史上最強の哲学入門』『自分とか、ないから。』)で動機を作ってから開くのが当サイトの推奨順です。第二に、著者は哲学の専門研究者ではなく「超読書家の実業家」です。個々の思想の解説の深さより、全体を一望させる編集力が本書の価値——深掘りは各哲学者の専門書(と当店の姉妹店)の担当です。

編集室メモ 読了目安は約10時間(章単位の拾い読みも可能な構成です)。評価は編集室の実読と、著者の読書歴・本書の受容(ビジネス書大賞2020特別賞など)の調査に基づきます。本書で「面白い」と感じた哲学者が西洋近代なら、デカルトカントショーペンハウアーニーチェと、当店の姉妹店がそのまま深掘りの階段になります。

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