『史上最強の哲学入門』書評——哲学史を「頂上決戦」として読む
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: 哲学の最初の一冊はこれです。真理・国家・神・存在という4つのリングに哲学者たちが次々と上がり、前の哲学者の主張を乗り越えていく——哲学史を「異種格闘技戦」として再構成した発明品。2010年の刊行以来、版を重ね続ける定番には理由があります。
- 書名
- 史上最強の哲学入門
- 著者
- 飲茶
- 出版社
- マガジン・マガジン(2010年。河出文庫版もあり)
- 形式
- テーマ別・バトル形式の入門書
- 難易度
- 入門 ★☆☆ ——予備知識ゼロで読める・約5時間
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どんな本か——3行で
「難しいことを面白く」で知られる作家・飲茶の代表作です。真理・国家・神・存在という4つの究極テーマごとに、ソクラテスからニーチェ、サルトルまでの哲学者が入場し、先行する主張を打ち破っていく——格闘技イベントの構成で哲学史を通します。表紙・挿絵は『グラップラー刃牙』の板垣恵介。ふざけた見た目に反して、各哲学者の主張の核心は驚くほど正確です。
核心——「乗り越え」の連鎖として読む哲学史
哲学史の教科書がつまらない理由は、思想が「並んでいる」からです。年表順に並んだ主張を暗記しても、なぜその思想が生まれたのかは見えません。
本書の発明は、思想を「前の思想への反撃」として描いたことです。絶対的な真理があると言った者に、それを疑う者が挑む。神を証明した者に、神を殺す者が現れる。この「乗り越えの連鎖」こそ哲学史の実際の駆動力であり、バトル形式は単なる演出ではなく、哲学史の本質に合った器なのです。読み終えると、哲学者の名前が「暗記項目」から「因縁のある登場人物」に変わっています。
読みどころ3点
1. 真理のラウンド——相対主義との攻防
「絶対の真理などない」というプロタゴラスの一撃から、デカルト、カント、そしてレヴィナスまで。哲学の中心問題が、一続きの試合として体感できます。
2. 神のラウンド——ニーチェの入場
神の存在証明の歴史を経て、「神は死んだ」のニーチェが登場する流れは本書の白眉。ここでニーチェが刺さった人は、姉妹店ニーチェの本棚が続きを案内します(同じ飲茶の『最強!のニーチェ入門』が次の一冊です)。
3. 存在のラウンド——ハイデガーまで届く
入門書が避けがちな「存在とは何か」という最難関テーマまで、同じテンションで連れて行ってくれます。ここまで読み切れる入門書は稀です。
注意点
二点。第一に、バトル形式ゆえに思想の単純化・デフォルメは前提です。各哲学者の「必殺技」として要約された主張は、原典のニュアンスを削っています。本書は地図であって領土ではありません。第二に、扱いは西洋哲学が中心です。東洋は同著者の続編『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』か、当サイトの『自分とか、ないから。』が担当します。
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