『哲学の教科書』書評——あなたのそれは教養であって、哲学ではない
★★★★☆4.2 / 5.0(編集室評価)
結論: 当サイトの読む順番の最終ステップに置きます。哲学は人生論ではない、宗教でも科学でも教養でもない——「何でないか」を一つずつ潰していった先に、死・時間・私というごまかしの効かない問いだけが残る。入門書を数冊読んだ人に、次の扉を蹴り開けさせる本です。
- 書名
- 哲学の教科書
- 著者
- 中島義道
- 出版社
- 講談社学術文庫(2001年。元版1995年)
- 形式
- 「哲学とは何か」を問う本格派エッセイ
- 難易度
- 中級 ★★☆ ——文章は明晰・問いは重い・約6時間
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どんな本か——3行で
ウィーン大学で哲学博士号を取得し、カントを専門としながら「戦う哲学者」の異名を持つ中島義道が、「哲学とは何か」だけを一冊かけて問うた本です。書名は皮肉です——世の「哲学の教科書」が教えてくれない、哲学することそのものの正体を扱います。1995年の元版以来、哲学科の学生と独学者の双方に読み継がれてきました。
核心——消去法でしか定義できないもの
本書の方法は徹底した消去法です。哲学は人生論ではない(生き方のコツを教えない)。宗教ではない(信じることを拒む)。科学ではない(実験で決着しない)。思想史の教養でもない(他人の考えを知ることと、自分で考えることは別だ)——。
では何が残るのか。著者の答えは、「なぜ私は死ぬのか」「時間とは何か」「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか」という、子供の頃に一度は触れて、大人になる過程で蓋をした問いです。哲学とは、その蓋を開けたまま生きる技術であり病である——この定義の切実さが、本書を「入門書の次」の決定版にしています。知識をいくら積んでも、この蓋を開けない限り哲学は始まらないのです。
読みどころ3点
1. 「哲学に向かない人」のリスト
素朴に人生を楽しめる人は哲学に向かない、と著者は容赦なく書きます。この挑発は読者の選別ではなく、哲学が万人の教養である必要はないという誠実さです。読んで反発するか、ぞくりとするか——それ自体が適性診断になります。
2. 死の章——本書の心臓部
「私が死ぬ」という一点をめぐる考察は、著者が生涯かけて格闘してきた主題であり、本書でもっとも熱のこもった箇所です。人生論の「死の受け入れ方」とは何の関係もない、剥き出しの問いに触れられます。
3. 哲学書の読み方の指南
カント研究者である著者による「原典とどう付き合うか」の助言は実用的です。全部わかろうとするな、自分の問いと重なる箇所だけが本当に読める——当サイトの読む順番の設計とも響き合う考え方です。
注意点——人を選ぶ本である
二点。第一に、著者の断定と皮肉の文体は明確に人を選びます。「哲学の楽しさ」を期待して開くと、冷水を浴びます——それが本書の効能でもあります。第二に、本書は哲学史の知識を体系的には教えません。知識の地図は『哲学と宗教全史』で先に持っておくと、本書の挑発を受け止める足場になります。順番でいえば、当サイトの5冊の最後が定位置です。
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