『レヴィナス・コレクション』書評——入門と主著のあいだに架かる橋
★★★★☆4.0 / 5.0(編集室評価)
結論: 解説を読み終え、いよいよレヴィナス自身の言葉に触れたい——そのタイミングにぴたりと合う一冊。編訳者・合田正人が主要論文と講演を精選しているので、いきなり大部の主著を通読する負担を負わずに、核心的なテクストへ直接入れます。「時間と他者」をはじめ、後の主著につながる思考の芽が、読み切れる分量で並ぶ。入門書と主著のあいだの段差を、この選集がなだらかにしてくれます。
- 書名
- レヴィナス・コレクション
- 著者
- エマニュエル・レヴィナス/合田正人 編訳
- 出版社
- ちくま学芸文庫
- 種別
- 選集(主要論文・講演のアンソロジー)
- 難易度
- 中級 ★★☆ ——原典だが選集ゆえ入りやすい。解説を経てから
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どんな本か——3行で
本書は、レヴィナス研究・翻訳の第一人者である合田正人が、レヴィナスの主要な論文・講演を選び、訳し、編んだ選集(アンソロジー)です。一冊の主著を頭から通読するのではなく、テーマごとに独立したテクストを、選ばれた順で読み進められます。初期の存在論的な考察から、〈他者〉や時間、倫理をめぐる中核的な論考まで、レヴィナスの思考の広がりと変遷を、一望できる構成になっています。原典でありながら、「どこから読めばいいか分からない」という初学者の迷いを、編集の力であらかじめ解いてくれる一冊です。
核心——主著の思考を、選ばれた分量で
レヴィナスの主著は、その厚さと文体の密度ゆえに、いきなり通読すると多くの人が途中で力尽きます。本書の価値は、主著へと結晶していく思考を、それぞれ独立した短めのテクストで先取りできる点にあります。とりわけよく知られる「時間と他者」は、〈他者〉との関係を「時間」の問題として捉え直す初期の重要な論考で、後の『全体性と無限』の主題がここに芽生えているのが読み取れます。一篇ごとに区切りがあるので、難しければ立ち止まり、日をあけて再挑戦するという読み方がしやすいのも、選集ならではの利点です。
また、レヴィナス自身の文体とリズムにここで慣れておけることが、後の主著攻略に効いてきます。彼の文章は、同じ主題を少しずつ角度を変えて反復し、螺旋を描くように深めていく独特の運びを持ちます。解説書で「意味」を知っていても、この「文の運び」に慣れていないと主著で失速しがちです。選集は、その運びに身体を慣らすためのウォーミングアップにもなります。
他者との関係は、時間そのものである——孤独な「私」が、決して私に還元されない他なるものと出会うとき、はじめて未来が開かれる。(「時間と他者」の主題を、編集部が要約したもの)
——本書に収められた思考の一端(編集部による大意)
読みどころ3点
1. 「時間と他者」で主著の芽に触れる
〈他者〉との出会いを時間の問題として論じるこの論考は、後の主著の土台です。ここを読んでおくと、『全体性と無限』の議論が「どこから来たのか」が見えます。
2. テーマ別に読める自由
一冊を通読する義務がなく、関心のあるテクストから入れます。難所は飛ばし、惹かれた一篇を繰り返す——そんな柔軟な読み方が許されます。
3. 編訳者の見識に導かれる
何を選び、どう並べるかに、研究者としての合田正人の見識が反映されています。独学では迷いがちな「読む順」が、選集の構成としてあらかじめ示されている安心感があります。
留意点と読み方
選集とはいえ、中身はまぎれもなくレヴィナスの原典です。解説書のように噛み砕いてはくれないので、1冊目・2冊目(熊野純彦・内田樹)で用語の地図と読む姿勢を整えてから開くことを強くおすすめします。読み方のコツは、全部を一度に理解しようとしないこと。まずは「時間と他者」など中核の一篇に絞り、分からない箇所には印だけつけて先へ進み、主著を読んだ後にもう一度戻る——そういう往復を前提にすると、選集は何度も帰ってこられる拠点になります。逆に、ここを飛ばして主著へ直行すると、文体の密度に不意打ちを食らいやすいので注意してください。
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