『人性論』書評——知性・情念・道徳を貫く、人間本性の学
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: ヒュームの主著の精髄に踏み込みたい人へ。二十代のヒュームが「ニュートンのような人間本性の学」を目指して著した大著『人間本性論』の精髄を訳した一冊です。知性(認識)・情念(感情)・道徳という三部構成で、人間の心の働き全体を一つの原理で捉えようとします。手強い主著ですが、代表作『人間知性研究』で核心をつかんでから読むと、その野心の大きさが見えてきます。
- 書名
- 人性論
- 著者
- デイヴィッド・ヒューム
- 訳者
- 土岐邦夫・小西嘉四郎
- 出版社
- 中央公論新社(中公クラシックス)
- 形式
- 新書判
- 難易度
- 上級 ★★★ ——主著の抄訳
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どんな本か——3行で
本書は、ヒュームが二十代で著した大著『人間本性論(A Treatise of Human Nature)』の精髄を訳出したものです。原著は「知性について」「情念について」「道徳について」の三巻からなり、人間の心の働きを一つの「人間本性の学」として体系的に捉えようとする壮大な試みです。本書はその核心を日本語で読めるようにした一冊で、ヒューム哲学の全体像に本人の言葉で触れられます。
核心——人間本性を、一つの学に
『人間知性研究』が認識論に絞って読みやすく書かれたのに対し、『人性論』の凄みは、認識・感情・道徳を貫いて、人間の心全体を一つの原理で説明しようとする野心にあります。ヒュームは、ニュートンが自然界を少数の法則で説明したように、人間の精神を「観念連合」という原理で説明しようとしました。因果が習慣であるように、道徳もまた理性ではなく「共感」という感情に基づく——認識論の懐疑が、そのまま情念論・道徳論へと一貫して展開されます。若書きゆえの勢いと未整理さもありますが、だからこそヒュームの思想が生まれる現場に立ち会える。代表作で核心をつかんだ読者が、その思想の全体像を主著で確かめるのにふさわしい一冊です。
読みどころ3点
1. 三部構成の全体像
知性・情念・道徳を貫く体系として、ヒューム哲学の全貌に触れられます。
2. 「共感」の道徳論
道徳を感情に基礎づける議論は、後の倫理学に大きな影響を与えました。
3. 思想の生まれる現場
若きヒュームの野心と勢いが、そのまま感じられる主著です。
注意点
二点。第一に、本書はこの棚でも屈指の難所です。いきなり読むより、まず『人間知性研究』で因果論の核心をつかんでから挑むのが安全です。第二に、本書は主著『人間本性論』全体の精髄・抄訳であり、完全な全訳ではありません。収録範囲は版により異なるため、詳細はAmazonの商品ページでご確認ください。
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