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『まんが!100分de名著 ハイデガー 存在と時間』書評——最難関に、まんがで登る最初の一段
★★★★☆4.0 / 5.0(編集室評価)
結論: 『存在と時間』は哲学史上最難関クラスの書物です。だからこそ、入口はいちばん低くしてください。このまんが版は死への存在・不安・本来性という「山頂の景色」を約1時間で先に見せてくれるので、そのあとに読む活字の入門書と原典の挫折率が目に見えて下がります。
どんな本か——3行で
NHK「100分de名著」の『存在と時間』回(戸谷洋志講師)をまんが化した一冊です。物語仕立てで、現存在・世人・死への存在・良心・本来性といった主要概念が、登場人物の生活の場面に埋め込まれて出てきます。テレビ版テキストが品切れ傾向にある現在、「100分de名著」系でもっとも入手しやすい入口でもあります。
なぜ「まんがから」が正解なのか
『存在と時間』の挫折要因は、難しさそのものより用語の異様さにあります。現存在、世界内存在、手許存在性——ページを開いた瞬間に並ぶ造語の壁は、地図なしで越えられるものではありません。まんが版は、この造語たちを先に「場面」として頭に入れてくれます。「ひと(世人)に流されて生きる」とはどういう状態か、「死への先駆」で何が変わるのか——絵で一度見ておけば、あとで活字の定義に出会ったとき、それは初対面の記号ではなく既に知っている場面の名前になっています。当サイトの姉妹アーカイブ〈わかりやすい「存在と時間」〉(無料)と併用すれば、序論の議論(§1〜§7)も同じ要領で「先に景色を見る」ことができます。
読みどころ3点
1. 「世人」の描写
誰でもない「ひと」に合わせて生きる日常——この本のいちばんの見せ場です。まんがという媒体は「空気を読む」場面の描写に強く、ハイデガーの世人論が現代日本の生活風景として立ち上がります。
2. 死への存在
『存在と時間』の核心であり、まんが版が最も丁寧に紙数を割く部分です。「死を先取りしたとき、はじめて自分の人生が自分のものになる」という論理の骨格が、理屈ではなく物語の転回として伝わります。
3. 戸谷洋志の監修
若手のハイデガー研究者が監修しており、まんが化にありがちな「雰囲気だけの要約」に落ちていません。概念の対応関係が原典に対して誠実です。
注意点——まんがにできないこと
二点。第一に、この本がカバーするのは主に公刊された第一部の実存論的分析の骨格で、存在の問い(「存在とは何か」という問いそのもの)の理論的な立て付けは薄めです。そこは姉妹アーカイブの§2「問い方(How)が大事」と§4「俺が実存。」が正面から扱っているので、無料で補完できます。第二に、まんがは入口であって代替ではありません——ここで止まると「わかった気」だけが残ります。次の一段(木田元か轟孝夫)へ必ず進んでください。
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