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ハイデガーの本棚

最難関の哲学書に、挫折しない道を。

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『ハイデガーの思想』書評——30年読み継がれる、全体像の定番地図

2026-07-07|ハイデガーの本棚 編集室

★★★★★4.4 / 5.0(編集室評価)

結論: ハイデガーの「地図」はこの一冊です。要点は本書の視角にあります——『存在と時間』は挫折した未完の書であり、書かれなかった後半にこそハイデガーの本当の狙いがあった。この一点を軸に前期から後期までが一本の線でつながる構成は、刊行から30年を経ても代わりが見つかりません。

ハイデガーの思想(装丁風イメージ・当サイト作成)
書名
ハイデガーの思想
著者
木田元
出版社
岩波新書(1993年)
形式
新書・248頁
難易度
入門〜中級 ★★☆ ——約5時間

Kindle版あり/価格・在庫はAmazonでご確認ください

どんな本か——3行で

メルロ=ポンティやフッサールの訳業でも知られる木田元が、ハイデガーの生涯と思想全体を新書一冊で通観した本です。『存在と時間』の内容紹介にとどまらず、書かれなかった後半部の構想、ナチス加担の問題、後期の「存在の歴史」までを一つの物語として描きます。1993年刊、いまも新刊で買える現役の定番です。

核心——「未完の書」という視角

『存在と時間』は、公刊された部分だけ読むと「人間(現存在)の実存の分析」の本に見えます。しかし表題が約束していたのは存在一般の意味の解明であり、公刊部分はその準備作業にすぎません——本書はこの「本編が書かれなかった」という事実を軸に据えることで、なぜ現存在の分析から始まるのか(この事情は姉妹アーカイブの§4コラム「現存在の謎」が扱う論点です)、なぜ後期ハイデガーはあれほど語り口を変えたのかを、一本の線で説明してみせます。入門書でありながら、読み終えると研究史の見取り図まで手に入っている——それがこの本が30年定番であり続ける理由です。

読みどころ3点

1. アリストテレスから説き起こす「存在の問い」

「存在とは何か」という問いがなぜ問いとして成立するのか。ギリシャ以来の存在論の歴史から説き起こす前半は、姉妹アーカイブが読解した序論の問題設定(§1「存在って不思議」§3)の、最良の背景解説になっています。

2. 『存在と時間』ダイジェストの手際

世界内存在から死への存在、時間性までの公刊部分の要約は、新書の紙幅でここまで落とせるのかという手際です。細部は轟本に譲り、幹だけを太く描きます。

3. 後期思想とナチス問題から目を逸らさない

転回後の「存在の歴史」、そしてナチス加担——都合の悪い部分を切り捨てずに全体像へ組み込む誠実さが、この本を単なる要約本と分けています。

注意点

二点。第一に、木田元の読み筋(『存在と時間』を存在一般への問いの未完のプログラムとして読む)は強力ですが、一つの解釈であることは頭の隅に置いてください。実存思想として読む竹田青嗣と読み比べると、解釈の幅ごと手に入ります。第二に、1993年刊のため近年の研究動向(全集刊行の進展など)は反映されていません。最新の見取り図が欲しくなったら轟孝夫『ハイデガーの哲学』(2023)が補完します。

編集室の実読メモ 読了目安は約5時間。編集室は姉妹アーカイブ〈わかりやすい「存在と時間」〉で序論§1〜§7を節単位で読解しており(全9記事・無料)、本書の「未完の書」という視角が序論の読解にそのまま効くことを実読で確認しています。特に§6「存在論をぶっ壊す」(存在論の歴史の解体)は、本書前半の存在論史と突き合わせて読むと像を結びます。

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