『分析哲学入門』書評——問題から手を動かして学ぶ
★★★★☆4.2 / 5.0(編集室評価)
結論: 「読む」だけでなく「やってみる」入門書です。「ある」「知っている」「心」といった誰もが使う言葉を素材に、分析という理屈を一歩ずつ動かして問題を解きほぐしていく——ユーモアのある語り口に乗せられているうちに、いつのまにか自分の頭で分析哲学をしている。手を動かして体で覚えたい人に向く一冊です。
どんな本か——3行で
英語圏で現代哲学の主流をなす分析哲学を、「分析哲学をしよう」という誘いから始める入門書です。「ある」とはどういうことか、「知っている」とはどういうことか、「言っていること」とは何か、心とは何か——根本的な問いを章ごとに立て、理屈を武器に、ユーモアを隠し味にして考え抜いていきます。アメリカの大学で長く教えてきた著者ならではの、実演型の入門です。
核心——「分析をする」入門
多くの入門書が「分析哲学とはこういう学問だ」と紹介するのに対し、本書は読者を「分析哲学をする」側に立たせます。素朴な言葉——「ある」「知っている」——をつかまえて、そこに潜む前提を一つずつ引き出し、区別を立て、反例を探す。この作業を著者と一緒にやっていくうちに、分析哲学の「手つき」そのものが身につきます。知識としてではなく技術として学べるのが、独学者にとって大きな利点です。
読みどころ3点
1. 「ある」を問う存在論
「〜がある」という何気ない言い方を掘り下げていく章は、形而上学・存在論の入口として秀逸です。当たり前の言葉がぐらつく感覚こそ、哲学の始まりだと実感できます。
2. 「知っている」を問う認識論
知識とは何か、どういうとき「知っている」と言えるのか。日常の確信が分析の光にさらされる章は、認識論の基本問題をスリリングに体験させてくれます。
3. ユーモアという伴走者
抽象的な議論が続いても失速しないのは、随所に効くユーモアのおかげです。笑いながら難所を越えられる——独学の途中で息切れしがちな人に、この語り口はよく効きます。
注意点
二点。第一に、体系的な地図というより問題ごとの実演なので、「分析哲学の全体像を先に俯瞰したい」人は、『分析哲学講義』と併読すると理解が安定します。第二に、軽妙な語り口ゆえ簡単に見えますが、扱う問題自体は本格的です。分かった気で流さず、立ち止まって考える価値のある本です。
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