『哲学の諸問題』書評——分析哲学の源流に立つ古典
★★★★☆4.0 / 5.0(編集室評価)
結論: 分析哲学が「どこから来たのか」を、原典で知るための一冊です。「目の前の机は本当に存在するのか」という素朴きわまる問いから出発し、知覚・実在・普遍・帰納・知識の限界へと着実に歩を進める——のちの分析哲学が精密化していく論点の原型が、驚くほど平明な言葉で並んでいます。100年以上前の本とは思えない読みやすさです。
- 書名
- 哲学の諸問題(ラッセルの哲学入門)
- 著者
- バートランド・ラッセル
- 原著
- The Problems of Philosophy(1912年)
- 形式
- Kindle版(電子書籍)
- 難易度
- 入門(古典) ★★☆
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どんな本か——3行で
20世紀を代表する哲学者ラッセルが、1912年に著した哲学入門の古典です。原題は The Problems of Philosophy。近代哲学が繰り返し取り組んできた諸問題——ものは見えるとおりに存在するのか、私たちは何を知りうるのか——を、専門用語をできるだけ避けて論じます。分析哲学がまだ「分析哲学」と呼ばれる前、その源流に立つ人物自身による見取り図です。
核心——「当たり前」を疑う技術
本書の魅力は、誰もが当たり前だと思っていることを、いったん立ち止まって疑ってみせる手つきにあります。「机がそこにある」——この確信すら、私たちが直接手にしているのは色や形といった感覚であって机そのものではない、と指摘されると足元がぐらつきます。この「見かけ(appearance)と実在(reality)」の区別から出発して、ラッセルは知覚・物質・観念論・帰納・普遍者へと論を進めます。分析哲学の基本動作である「概念を区別し、前提を吟味する」を、原典で味わえるのが本書です。
読みどころ3点
1. 見かけと実在(第1章)
机は本当にあるのか——この一章だけで、哲学的に「見る」とはどういうことかが分かります。以後の議論すべての土台になる、忘れがたい導入です。
2. 帰納の問題
「明日も太陽は昇る」となぜ言えるのか。過去の経験から未来を推論することの正当化を問う議論は、科学の根拠を問い直す視点として今なお刺激的です。
3. 普遍者をめぐる考察
「白さ」や「兄であること」のような普遍的なものはどこに存在するのか。個物とは異なる仕方で「ある」ものを論じる後半は、形而上学の核心へ読者を導きます。
注意点(版について)
本書は原著が1912年刊行の古典で、日本語ではこれまで複数の翻訳・版が出ています。当ページがリンクしているのはAmazonで入手できる電子書籍版です。訳の読みやすさや訳注の充実を重視する読者は、購入前に訳者・底本を商品ページでご確認ください。紙で定評のある翻訳を選びたい場合は、ちくま学芸文庫の『哲学入門』(高村夏輝訳)など、原著 The Problems of Philosophy の既訳を書店で確認するのも一案です。内容そのものはどの版でも同じ古典です。
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