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加速主義の本棚

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『21世紀を動かす思想』書評——加速主義を、同時代の地図のなかに置く

2026-07-12|加速主義の本棚 編集室

★★★★☆4.3 / 5.0(編集室評価)

結論: 加速主義を単独で追うのではなく、いま同時代を動かしつつある他の思考——プルラリティ、SFプロトタイピングなど——と並べて眺めたい人に。加速主義を「奇矯な過激思想」として孤立させず、テクノロジーと未来をめぐる現代思想の布置のなかに位置づけて読める点に価値があります。一冊目で加速主義の輪郭を掴んだあと、視野を横へ広げる二冊目に最適。概説の一冊としては射程が広く、そのぶん各テーマの掘り下げは軽やかです。

21世紀を動かす思想(装丁風イメージ・当サイト作成)
書名
21世紀を動かす思想 加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピング
著者
樋口恭介
出版社
集英社新書
種別
概観(新書サイズの俯瞰)
難易度
入門 ★☆☆ ——新書として平易。同時代の思想を横断的に概観

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どんな本か——3行で

著者の樋口恭介はSF作家・評論家で、SFプロトタイピング(フィクションを通じて未来を構想する手法)の実践者としても知られます。本書は、加速主義を含む「いま21世紀を動かしつつある思想」を、一冊で横断的に俯瞰しようとする概観書。加速主義に加えて、多様性を単なる分断ではなく協働の資源として捉えるプルラリティ、フィクションを未来設計に用いるSFプロトタイピングなど、テクノロジーと社会の未来をめぐる複数の思考を並べて紹介します。ひとつの主義を深掘りするのではなく、同時代の思想の地図を描くことに主眼があります。

核心——加速主義を布置のなかに置く

本書の核心的な価値は、加速主義を孤立した過激思想として扱わないところにあります。加速主義だけを単独で読むと、その挑発的なレトリックに目を奪われ、「なぜいまこの思想が語られるのか」という文脈を見失いがちです。本書は、加速主義を、テクノロジーがもたらす未来をどう構想するかという同時代の大きな問いのなかに置き直します。加速主義が「加速の先に別の未来を賭ける」立場だとすれば、プルラリティは「多様性の協働から未来を編む」立場、SFプロトタイピングは「物語から未来を先取りする」立場——というふうに、複数の未来構想の一つとして相対化されるのです。

この相対化は、とりわけ原典に進む前に効きます。ランドの暗黒啓蒙のような過激な主張に出会ったとき、それを唯一の未来像として過大に受け取るのでも、頭ごなしに退けるのでもなく、数ある未来構想の一つとして冷静に読む構えが、本書を経ると身につきます。

加速主義は、未来をめぐる複数の思考のうちの一つである——それを他の未来構想と並べて眺めることで、はじめてその賭けの意味も、危うさも見えてくる。(本書全体の趣旨を、編集部が要約したもの)

——『21世紀を動かす思想』の中心的な見取り図(編集部による大意)

読みどころ3点

1. 加速主義を「相対化」して読める

他の未来構想と並置されることで、加速主義の特異さも限界も見えやすくなります。原典の過激さに呑まれない読み方が、ここで準備できます。

2. SF作家ならではの語り口

抽象的な思想を、未来のイメージや物語に引きつけて語るため、哲学書に不慣れな読者にも入りやすい平易さがあります。

3. 現代思想の見取り図が一冊で手に入る

加速主義だけでなく、プルラリティやSFプロトタイピングまで一望できるので、いま何が語られているのかという同時代の地図が、短時間で得られます。

留意点と読み方

本書は俯瞰に主眼を置いた概観書であり、加速主義そのものを一冊まるごと深掘りする本ではありません。加速主義の左派/右派の分岐や、ニック・ランドの思想的軌跡を腰を据えて追いたいなら、木澤佐登志『加速主義 増補新版』のほうが適しています。本書の強みは、あくまで複数の思想を横に並べて位置関係を見せるところ。おすすめの読み方は、一冊目で加速主義の輪郭を掴んだうえで、本書を「同時代のどこに位置するのか」を確認するために読むこと。各テーマの掘り下げは軽やかなので、気になった思想は本書を入口に、それぞれの専門書へ進むとよいでしょう。

編集室メモ 本評は本書の通読と、著者の他の著作・SFプロトタイピング関連の書誌調査にもとづく評価です。読了目安は約5時間。本ページで示した加速主義・プルラリティ・SFプロトタイピングの説明と引用ブロックは、いずれも編集部による要約・大意であり、本書の文章をそのまま転載したものではありません。正確な言い回しは本書でご確認ください。著者・出版社(樋口恭介/集英社新書)は書誌情報にもとづき記載しています。

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