『意志と表象としての世界〈1〉』書評——挫折率最高の主著を、最後まで読むために
★★★★★4.8 / 5.0(編集室評価)
結論: 5冊の最終目標であり、ここまでの4冊はすべてこの本のための助走です。いきなり買ってはいけない本でもあります——エッセイ群で本人の声に慣れてから挑めば、19世紀哲学の最高峰の一つを自分の足で登る体験ができます。訳は現行入手できる中で最良の西尾幹二訳を。
- 書名
- 意志と表象としての世界〈1〉
- 著者
- ショーペンハウアー(西尾幹二 訳)
- 出版社
- 中公クラシックス(2004年)
- 分量
- 426頁(全3巻の第1巻)
- 難易度
- 上級 ★★★ ——本格的な体系書
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どんな本か——3行で
「世界とはわたしの表象である」という一文から始まる、ショーペンハウアーの主著(1819年)の第1巻です。世界を〈表象〉(認識に現れる世界)と〈意志〉(その背後で盲目的に働く力)の二面から解き明かす体系書で、ニーチェ、ワーグナー、トーマス・マン、フロイトにまで影響が及びました。第1巻には認識論(第一部)と意志の形而上学(第二部)が収められています。
なぜ挫折するのか——原因は2つだけ
この本の挫折には定型があります。第一に、冒頭からカントの認識論を前提に話が進むこと。「表象」「根拠の原理」という道具立てで最初の50頁につまずく人が大半です。第二に、全体像が見えないまま426頁を歩かされること。いま自分が体系のどこにいるのか分からなくなった時点で、本は閉じられます。
裏を返せば、対策も2つだけです。①先にエッセイ群(『幸福について』など)で「人生は苦である。意志が原因だ」という結論を知っておく。②地図を持って歩く——次節の読み方を参照してください。
読みどころ3点
1. 第二部——「世界は盲目的な意志である」
本書の心臓部は、自分の身体の内側から世界の正体(意志)に到達する第二部の議論です。認識論の壁を越えた読者だけが読める、哲学史上屈指のスリリングな展開で、ここまで来れば挫折の心配はもうありません。
2. 西尾幹二訳+鎌田康男の解説
現行の入手しやすい訳では、西尾訳がもっとも日本語としてこなれています。巻頭の鎌田康男による解説はカントとの関係を含む見取り図として秀逸で、本文前にこれを二度読むだけで挫折率は目に見えて下がります。
3. 哲学書としては例外的に「文章が美しい」
ヘーゲルの同時代人でありながら、ショーペンハウアーの散文は明晰さで際立っています。難解なのは概念の建て付けであって文章ではない——これは体系書としては稀有な美点です。
挫折しない読み方(実践)
編集室の推奨は次の順路です。①巻頭解説を読む → ②第二部(§17〜)から読み始める → ③面白くなってから第一部(認識論)に戻る。行儀は悪いですが、完読率はこちらのほうが確実に高い。そして詰まった§では、姉妹サイトの§単位の読解記事(無料)を併走させてください。編集室が§1から§71まで実際に読解した記録があります。
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