『100分de名著 西田幾多郎 善の研究』書評——「純粋経験」を、実感でつかむ
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: 西田の最初の一冊はこれです。批評家・若松英輔が『善の研究』の核心を日常の言葉で解きほぐす入門。「純粋経験」を難語としてではなく、私たちが何かに没頭する瞬間の実感として語り直します。薄く読みやすいのに要点を外さず、原典に進む前の最良の足場になります。
どんな本か——3行で
本書は、NHK『100分de名著』のテキストを増補した入門書で、批評家・若松英輔が西田の代表作『善の研究』を四つの視点から読み解きます。主著の骨格である「純粋経験」を出発点に、知と情意が一つになった経験の場から善や実在を捉え直す西田の思索を、抽象語に頼らず日常の実感に引きつけて解説します。
核心——難語を、実感に翻訳する
『善の研究』最大の壁は、「純粋経験」という言葉が最初に来ることです。多くの入門書はこれを概念として説明しますが、本書は「音楽に聴き入る」「一心に何かをする」その最中の、主観と客観が分かれる前の経験として語ります。この翻訳のおかげで、読者は西田の出発点を頭ではなく身体で受け取れる。若松の批評家としての言葉の選び方が、難解で知られる西田を驚くほど近くに引き寄せます。ここで核心をつかんでおくと、後で原典に入ったとき、あの独特の文章が「知っている感触」で読めます。
読みどころ3点
1. 純粋経験が腑に落ちる
抽象的な定義ではなく、日常の没頭の瞬間として語られるので、出発点を実感でつかめます。
2. 四つの切り口で全体を俯瞰
経験・実在・善・宗教という骨格を短い分量で見渡せ、原典の地図になります。
3. 批評家の言葉の力
詩や信仰にも通じた若松の筆致が、硬い哲学書を「自分ごと」に変えてくれます。
注意点
二点。第一に、本書は入口を作る本であり、これ一冊で『善の研究』を読んだことにはなりません。核心をつかんだら、必ず原典(注釈つきの講談社学術文庫版)へ進んでください。第二に、若松の読みは一つの優れた解釈です。他の読み筋も知りたくなったら、藤田正勝の精読書が別の角度を与えてくれます。
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