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『墨子』(中公クラシックス・金谷治訳)書評——名訳の日本語で、原典の骨格を
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: 端正な訳文で味わいたいならこれです。『論語』『荀子』『老子』など中国古典の名訳で知られる金谷治による『墨子』。中公クラシックスの体裁で、練られた訳文とともに読めます。三つの訳注のどれを選ぶかは最終的に「訳文の呼吸」の好みですが、他の古典で金谷訳に親しんだ読者なら、その端正な日本語で墨子に入れる本書がいちばん心地よいはずです。
どんな本か——3行で
本書は、中国哲学研究の泰斗・金谷治による『墨子』です。金谷は『論語』『荀子』『老子』『孫子』など数多くの中国古典を手がけ、その端正で信頼される訳文で長く読まれてきた訳者です。中公クラシックスという古典叢書の体裁で、練られた訳とともに墨子の思想を読み進められます。訳者の日本語そのものに味わいがあり、「名訳で古典を読む」体験を求める読者に向く一冊です。
核心——訳文の呼吸
同じ原典でも、訳者が違えば読み心地は変わります。金谷訳の身上は、長年にわたり中国古典を訳してきた手によるこなれた日本語の呼吸です。墨子の畳みかける論法を、無理に砕きすぎず、しかし古めかしくもしすぎない絶妙な塩梅で移します。他の古典——たとえば岩波文庫の『論語』などで金谷訳に親しんだ読者なら、その一貫した文体で墨子に入れるのは大きな安心です。兼愛・非攻・節用という主張の骨格は、どの訳で読んでも変わりませんが、それをどの日本語の手ざわりで受け取るかは読書体験を左右します。訳文の質そのものを楽しみたい人にとって、本書は魅力的な選択肢です。
読みどころ3点
1. 端正な訳文
中国古典を訳し続けた訳者ならではの、こなれた日本語。原文の論理を保ちながら、読んでいて心地よい文体で墨子に触れられます。
2. 他の金谷訳と地続き
『論語』『荀子』などを金谷訳で読んできた人には、同じ文体で諸子百家を横断できる利点があります。中国思想を一貫した訳で読み進めたい人に。
3. 叢書としての格
中公クラシックスの一冊として、古典を「きちんと読む」構えが整っています。腰を据えて名訳と向き合いたい読書に向きます。
浅野訳・森訳との違い
本棚の原典訳注三点は同じ『墨子』の異なる訳・訳注で、三冊を揃える必要はありません。大まかな性格は——金谷訳(本書・中公)は端正な訳文、浅野訳(講談社)は読みやすさ、森訳(ちくま)は手堅い注と参照性、です。はじめての原典で挫折を避けたいなら浅野訳、注を含めて手堅く読み込みたいなら森訳、そして訳文の質・他の金谷訳との一貫性を重んじるなら本書。どれか一冊で墨子の骨格は十分につかめます。読み比べは、一冊を通読したあとの楽しみに取っておくのがおすすめです。なお版によって体裁・収録範囲が異なる場合があるため、詳細は商品ページでご確認ください。
注意点
二点。第一に、本書は原典を読む一冊であり、思想の全体像を最初に俯瞰する用途には入門書のほうが向きます。骨格を持たないままだと、名訳であっても細部で迷いがち。入門書か浅野訳を経てからのほうが快適です。第二に、「墨経」など技術的な篇は初読では難所です。まずは兼愛・非攻という幹をたどり、細かな論理学的議論は再読に回すのが無理のない進め方です。
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