『存在と時間』書評——最後に読む。しかし、必ず読む
★★★★★4.8 / 5.0(編集室評価)
結論: この本棚全体の最終目標です——そして厳密に、最後の一冊です。世界内存在、世人、死への存在、時間性。二十世紀の哲学と現代思想の語彙の多くが、この未完の書で鋳造されました。上の4冊の階段を登ってから開けば「知っている景色の完全版」として読めますが、いきなり買うと、歴代の読者と同じ場所で止まります。
- 書名
- 存在と時間〈上〉〈下〉
- 著者
- マルティン・ハイデガー/細谷貞雄 訳
- 出版社
- ちくま学芸文庫(1994年・原著1927年)
- 形式
- 原典・全2冊(上巻528頁)
- 難易度
- 上級 ★★★ ——数ヶ月単位の登山
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どんな本か——3行で
1927年、38歳のハイデガーが刊行した主著です。「存在とは何か」という、ギリシャ以来忘れられた問いを立て直すために、まず問う者である人間(現存在)の存在構造を分析する——それが公刊された部分の中身です。そして本書は未完です。予告された後半は書かれず、その「書かれなさ」自体が二十世紀哲学を動かしました。
全体の見取り図
序論:存在の問いの立て直し(§1〜§8)。第一部第一篇:日常性の分析——世界内存在、道具、世人。第二篇:本来性への転回——死への存在、良心、決意性、そして時間性。ここで公刊部分は終わる。
——編集室による一行地図
序論の§1〜§7は、姉妹アーカイブ〈わかりやすい「存在と時間」〉が節単位で読解しています(無料・全9記事)。§1 存在って不思議/§2 問い方(How)が大事/§3 そんなこと考えて何の役にたつの?/§4 俺が実存。/§5 時間が重要な気がする/§6 存在論をぶっ壊す/§7 「ことがらそれ自身へ!」と唱えろ——原典の序論と一節ずつ突き合わせられる構成なので、購入前に序論の登り方を無料で下見することができます。
読みどころ3点
1. 道具分析(第一篇)
ハンマーは「見られる物」である前に「使われる物」である——世界は観察の対象である前に、生活の場として既に了解されている。この分析が二十世紀の哲学・認知科学・デザイン論にまで波及しました。日常の風景が変わる読書体験は、まずここで起きます。
2. 世人(ひと)論
誰でもない「ひと」の支配として日常性を描く§27前後は、SNS時代の読者にこそ刺さる部分です。百年前の記述が現代の空気の解剖として読めてしまうことに、誰もが驚きます。
3. 死への存在から時間性へ(第二篇)
自分の死を先取りする(先駆)ことで、人生が「ひとの人生」から「私の人生」へ切り替わる——本書の頂上です。そしてその可能性の条件として時間性が取り出され、表題の「時間」が回収されます。
挫折ポイントと訳の選び方
挫折の型は決まっています。序論(§1〜§8)の密度で止まる——ここは姉妹アーカイブと轟本を並走させて越えてください。序論さえ抜ければ、第一篇の道具分析はむしろ面白く読めます。訳の選択肢は四つ:本棚の推しは細谷貞雄訳(ちくま学芸文庫・上下2冊)——長年の定番で参照文献との相性がよく、もっとも安価にそろいます。読解の足場(各節の梗概・注)が欲しい人は熊野純彦訳(岩波文庫・全4冊)、Kindleで読みたい人は中公クラシックス版の合本Kindle、たっぷりの解説と一緒に登りたい人は中山元訳(光文社古典新訳文庫・全8巻完結)。どれを選んでも登れます——選ばないことだけが登れません。
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