『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』書評——知識を、実感に落とす
★★★★☆4.2 / 5.0(編集室評価)
結論: 通史で「頭」に入れた歴史を、「腹」に落とすための一冊。漫画家・田房永子が、素朴でときに答えにくい疑問を上野千鶴子にぶつけ続ける対話で、母娘・結婚・性・仕事といった日常の悩みが、じつはフェミニズムの主題だったと気づかされます。マンガと語り口のおかげで、驚くほど速く読めます。
- 書名
- 上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!
- 著者
- 上野千鶴子・田房永子
- 出版社
- 大和書房(2020年)
- 形式
- 対談+マンガ
- 難易度
- 入門 ★☆☆ ——約3〜4時間
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どんな本か——3行で
日本のフェミニズムを牽引してきた社会学者・上野千鶴子に、漫画家の田房永子が「聞き手」として向き合う対話本です。母娘関係、結婚・育児、性、団塊世代の父、そして「私はフェミニストと名乗っていいのか」まで、テーマは徹底して具体的。各章の合間に田房のマンガが挟まり、理屈が身体感覚に翻訳されていきます。
核心——「質問する側」の設計
この本の巧さは、上野千鶴子という「答える側」ではなく、田房永子という「質問する側」の設計にあります。田房は専門家ではなく、日々のもやもやを抱えた一人の書き手として、遠慮なく、しかし切実に問います。だから読者は「わからないのは自分だけではない」と安心して、上野の答えに耳を傾けられます。通史(本棚の1位)が「フェミニズムとは何か」を外側から描くのに対し、本書は「なぜ自分はこんなに生きづらいのか」という内側の問いから入る。同じ主題への、まったく逆向きの入口です。だから両方読むと立体的になります。
読みどころ3点
1. 母娘問題という「入りやすい扉」
「母がしんどい」の著者でもある田房の実感から始まる母娘の話は、ジェンダーの問題を最も身近な場所から考えさせてくれます。抽象論が苦手な人ほど、ここから入れます。
2. マンガが概念を「絵」にする
言葉だけでは滑っていく概念を、田房のマンガが具体的な場面に定着させます。図解ではなく体験として腑に落ちるのが、本書の最大の親切です。
3. 「私はフェミニスト?」への応答
名乗ることへのためらいに、上野が正面から答える終盤。ラベルの是非で足踏みしていた読者の背中を、静かに押してくれます。
注意点
二点。第一に、本書は体系的な教科書ではなく対話です。話題は具体的な悩みを軸に展開するため、歴史や理論の見取り図は本棚1位・3位で補うのが前提になります。第二に、対話ならではの勢いで断定的に響く箇所もあります。上野千鶴子個人の見解として受け取り、鵜呑みにせず、他の論者と読み比べる姿勢で臨むと、いっそう実りがあります。
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