『フェミニズムがひらいた道』書評——2時間で、歴史の背骨を通す
★★★★☆4.4 / 5.0(編集室評価)
結論: いちばん薄くて、いちばん骨太の通史。上野千鶴子がフェミニズムを「四つの波」に整理し、何を勝ち取り、何をまだ変えられていないかを約2時間で見晴らす一冊です。122頁という薄さに歴史の背骨が一本きれいに通っていて、1位・2位で得た知識に構造を与えてくれます。
- 書名
- フェミニズムがひらいた道
- 著者
- 上野千鶴子
- 出版社
- NHK出版 学びのきほん(2022年)
- 形式
- 新書判・122頁
- 難易度
- 入門〜中級 ★★☆ ——約2時間
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どんな本か——3行で
NHK出版「学びのきほん」シリーズの一冊で、上野千鶴子が「はじめての人のために」書き下ろした短い通史です。フェミニズムの歴史を「四つの波」に区切り、参政権の獲得、性別役割からの解放、そして#MeTooへと至る流れを、約2時間で読み通せる分量に凝縮しています。薄いのに、要点の抜けがありません。
核心——「四つの波」で読む
本書の背骨は、フェミニズムを連続する「波」として捉える視点です。第一の波は法的・政治的平等(参政権)を、第二の波は「個人的なことは政治的なこと」として家庭や身体の問題を、そして続く波が多様性やネットを介した告発を——というふうに、それぞれの波が前の波の「やり残し」を引き受けて起こる。この構造が頭に入ると、いま起きている論争が「四つの波」のどこに位置するのかを自分で判定できるようになります。とりわけ上野が力を込めるのは、制度上の平等が実現しても、なお変わらなかったものへの視線です。学校で習う男女雇用機会均等法や男女共同参画が、なぜ「本当の平等」に届かなかったのか——その問いが、本書を単なる年表以上のものにしています。
読みどころ3点
1. 薄さは「削った」薄さ
122頁は情報が少ないのではなく、要点だけを残して削り込んだ薄さです。第一人者だからこそできる大胆な取捨選択が、初学者には最良のガイドになります。
2. 「勝ち取ったもの/残された課題」の二本立て
成果と限界を必ずセットで語るのが本書の誠実さ。フェミニズムを「完了した歴史」ではなく「進行中の運動」として渡してくれます。
3. 通史どうしの読み比べができる
本棚1位の山口真由『世界一やさしい』とは、同じ200年史でも切り口が違います。二冊を読み比べると、歴史は一通りではないと体感でき、中級への足場になります。
注意点
二点。第一に、薄さゆえに個々の論者・事件の掘り下げは最小限です。深掘りは原典や専門書に譲る設計だと理解して読んでください。第二に、「四つの波」という枠組みは見通しをよくする一方、現実のフェミニズムの多様さを整理しすぎる面もあります。あくまで一つの有力な地図として受け取り、次に読むソルニットの現代的な視点で補うと、平板になりません。
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