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『わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い』書評——歴史を「いま」につなぐ
★★★★☆4.1 / 5.0(編集室評価)
結論: 歴史を学んだあとにこそ効く、現代のエッセイ集。「マンスプレイニング」を世に広めた『説教したがる男たち』のソルニットが、声と沈黙をめぐって書き継いだ論考です。通史で枠組みを持ってから読むと、いま自分の周りで起きている「黙らされること」の正体が、鮮やかに言語化されます。
- 書名
- わたしたちが沈黙させられるいくつかの問い
- 著者
- レベッカ・ソルニット
- 訳者
- ハーン小路恭子
- 出版社
- 左右社(2021年)
- 形式
- 四六判・272頁
- 難易度
- 中級 ★★☆ ——約6時間
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どんな本か——3行で
#MeTooの世界的なうねりを準備した名著『説教したがる男たち』の系譜に連なる、レベッカ・ソルニットのエッセイ集です。「誰が語れて、誰が黙らされるのか」という一点を、事件・文学・日常の場面から多角的に照らし出します。歴史の教科書ではなく、いま進行中の現実を考えるための批評として読む一冊です。
核心——「沈黙させられる」の解剖
本書のタイトルにある「沈黙させられる」という受動態が、そのまま主題です。ソルニットは、沈黙を「たまたま黙っていること」ではなく、制度や慣習や暴力によって声を奪われる能動的なプロセスとして解剖していきます。誰の証言が信じられ、誰の訴えが「大げさ」とされるのか。その線引きがどれほど不均等に引かれてきたか——彼女の筆は、告発の激しさよりも、その不均等さを一つずつ言葉にしていく粘り強さで読ませます。本棚1〜3位で「フェミニズムが何と闘ってきたか」を歴史として学んだ読者は、ここで初めて、その闘いが過去の話ではなく現在形だと実感するはずです。歴史編と原典編をつなぐ、蝶番のような一冊です。
読みどころ3点
1. 怒りより「精密さ」で書く文体
ソルニットの強みは、感情の激しさではなく観察の精密さです。だからこそ立場を異にする読者にも届く——このトーンは、党派的な議論に疲れた人ほど信頼できます。
2. エッセイという「入りやすい中級」
体系書ではなく独立した論考の集まりなので、興味を引かれた一篇から読めます。理論書に進む前の「中級の助走」に最適な形式です。
3. 翻訳の読みやすさ
ハーン小路恭子の訳は、原文の批評的なリズムを保ちつつ日本語として滑らかです。海外のフェミニズム批評は訳文で挫折しがちですが、本書はその心配が少なめです。
注意点
二点。第一に、本書はアメリカの社会・政治の文脈を前提にした場面が多く、背景知識があるほど深く読めます。本棚1〜3位で歴史の土台を作ってから読むことを強くすすめる理由です。第二に、エッセイ集ゆえに一冊を貫く単線の「結論」はありません。各篇の視点を自分の中でつなぐ読み方が向いています。答えを一つ受け取る本ではなく、問いを増やす本です。
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