『アウグスティヌス講話』書評——原典の言葉が、語りでほどける
★★★★☆4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: 『告白』の名訳者・山田晶が、聴衆に語りかけるように解きほぐす講話集。専門用語を最小限にして、回心・祈り・時間論といった核心へまっすぐ届きます。原典の重厚さに身構えてしまう人でも、この一冊を通ると『告白』の言葉がぐっと身近になる。中公文庫版『告白』(山田晶訳)と同じ訳者なので、あわせて読むと理解が立体的になります。
- 書名
- アウグスティヌス講話
- 著者
- 山田晶
- 出版社
- 講談社(講談社学術文庫 1186)
- 形式
- 文庫
- 難易度
- 入門〜中級 ★★☆ ——語りで読みやすいが内容は本格的
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どんな本か——3行で
本書は、アウグスティヌス研究の第一人者であり『告白』の名訳でも知られる山田晶が、その思想の核心を語りの形で解き明かした講話集です。学術論文の硬さではなく、聴き手に語りかける口調で、回心とは何だったのか、祈りとはどういう営みか、「時間とは何か」という難問をアウグスティヌスはどう考えたのか——といった主題を、噛みくだいて論じます。原典と入門書の中間に位置する、橋渡しの一冊です。
核心——訳者だからこそ届く言葉
本書の強みは、著者が『告白』を原典(ラテン語)から訳した当人である点にあります。だから語られる言葉の一つひとつが、原文の手ざわりに裏打ちされています。たとえばアウグスティヌスの時間論——「過去はもうなく、未来はまだなく、現在は一瞬で過ぎ去る。ではわたしたちは何を計っているのか」という有名な問い——を、山田は抽象論に走らず、私たちの日常の経験に引きつけて語り直します。難しい概念を、難しいまま放り出さず、しかし安易に単純化もしない——この絶妙なバランスが、碩学の講話ならではの味わいです。『告白』を一度読んで「後半がよくわからなかった」という人が本書を読むと、流し読みした箇所の意味が後から立ち上がってくる。原典と並走する伴走者として、これ以上の一冊はなかなかありません。
読みどころ3点
1. 語り口のやわらかさ
講話ゆえの平易さがありながら、内容は本格的。専門用語に頼らずに核心へ届くので、原典に身構えていた人の緊張をほどいてくれます。
2. 時間論・祈りの解説が白眉
『告白』後半の難所である時間論や、祈りという営みの意味が、日常の経験に引きつけて語られます。原典で挫折しがちな箇所の理解が一気に進みます。
3. 訳者ならではの原文の手ざわり
訳語の選択の背後にある原文のニュアンスまで踏み込むので、翻訳では見えにくい細部が伝わります。中公訳『告白』との併読で効果は倍増します。
注意点
一点。本書は『告白』を読む前でも読めますが、一度『告白』の物語部分に触れてから読むと、講話の一言一句がぐっと深く響きます。まったくの白紙から入るより、代表作を軽く通読したあと、あるいは並行して読むのが理想です。また、著者の語りは特定の主題(回心・時間・祈りなど)に絞られており、アウグスティヌスの全著作を網羅する概説ではありません。全体像の地図がほしいなら『「心」の哲学者』を先に。
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