『アドラー心理学入門』書評——対話で掴んだものを、体系で組み直す
★★★★☆4.4 / 5.0(編集室評価)
結論: 『嫌われる勇気』で惹かれたアドラー心理学を、もう一段しっかりした枠組みで学び直すための一冊。同じ著者・岸見一郎が、今度は対話劇ではなく体系的な解説として、目的論から共同体感覚、育児・教育への応用までを順序立てて示します。ベストセラーが「入口」なら、本書は思想の「見取り図」。原典へ進む前の、確かな二段目の踏み台です。
- 書名
- アドラー心理学入門 よりよい人間関係のために
- 著者
- 岸見一郎
- 出版社
- ベスト新書(KKベストセラーズ)
- 種別
- 体系入門(新書サイズの解説書)
- 難易度
- 中級 ★★☆ ——新書として明快。対話本の次に体系を得る一冊
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どんな本か——3行で
本書は、『嫌われる勇気』の著者としても知られる岸見一郎が、アドラー心理学を新書一冊で体系的に解説した入門書です。刊行は対話ベストセラーより前で、岸見のアドラー理解の土台がまとまった一冊でもあります。対話形式のドラマ性はありませんが、そのぶん概念が理路整然と積み上げられ、「アドラーは結局どういう体系なのか」を落ち着いて俯瞰できます。副題「よりよい人間関係のために」が示すとおり、思想を人生と対人関係にどう活かすかという実践的な視点も一貫しています。
核心——概念を「順序」で組み上げる
対話本の弱点は、概念が物語の流れに沿って断片的に出てくることです。本書の核心的な価値は、その断片を論理的な順序で組み直してくれる点にあります。まず人間を分割できない全体として捉える立場(個人心理学=individual psychology の原義)が置かれ、そこから目的論、劣等感と補償、行動や思考の一貫した型であるライフスタイル、そして人生の課題と共同体感覚へと、概念が階段状に積み上がっていきます。
とりわけ育児・教育への応用に紙幅が割かれているのが本書の特徴です。アドラー心理学がなぜ「ほめない・叱らない」を説き、代わりに勇気づけを置くのか——その理由が、共同体感覚という土台から筋道立てて説明されます。対話本では結論として提示されていた主張が、ここでは「なぜそう言えるのか」まで含めて理解できる。感覚的な納得を、論理的な理解へと変える一冊です。
人は分割できない全体であり、その行動はつねに何らかの目的へ向かっている。ゆえに人を変えるとは、原因を取り除くことではなく、目的とライフスタイルを選び直す勇気を与えることである。(本書の骨格を、編集部が要約したもの)
——『アドラー心理学入門』の見取り図(編集部による大意)
読みどころ3点
1. 概念が「なぜ」まで含めて分かる
対話本では結論だった主張が、本書では前提から論理的に導かれます。「ほめてはいけない」の理由が腑に落ちるのは、この体系的な説明があるからです。
2. 育児・教育への応用が具体的
親・教師の立場で読むと、日々の関わり方に直結するヒントが多く得られます。理論と実践のあいだをつなぐ、実用的な章立てです。
3. 原典への橋渡しになる用語整理
ライフスタイル、劣等コンプレックス、共同体感覚といった専門用語が、正確に整理されます。ここを通っておくと、原典の臨床用語で迷子になりにくくなります。
留意点と読み方
本書は対話本のような娯楽性はなく、解説書らしい落ち着いた記述です。物語のドライブ感を期待すると、やや淡々と感じるかもしれません。おすすめは、まず対話ベストセラーで全体像と手応えを得てから本書を開き、概念を体系として組み直す読み方。順序が逆だと、抽象的な整理が頭に入りにくいことがあります。また本書は岸見一郎による解説であり、アドラーの見解に岸見の理解・強調が加わっている点は、対話本と同様に踏まえておくとよいでしょう。ここで体系を掴んだら、いよいよアドラー本人の言葉——本棚5冊目『人生の意味の心理学』へ進む準備が整います。
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