『人生の意味の心理学』書評——ついに、アドラー本人の言葉へ
★★★★★4.7 / 5.0(編集室評価)
結論: ここが源泉です。『嫌われる勇気』が岸見一郎・古賀史健による解釈・再構成であるのに対し、本書はアドラー本人が一般読者へ向けて書いた代表作。劣等感、共同体感覚、早期回想、ライフスタイルの分析が、本人の言葉と豊富な臨床例で語られます。訳は対話本と同じ岸見一郎。本棚で最も歯ごたえがありますが、ここまで来れば、対話本で得た理解が原典で一つひとつ裏づけられます。
- 書名
- 人生の意味の心理学〈新装版〉(アドラー・セレクション)
- 著者
- アルフレッド・アドラー/岸見一郎 訳
- 出版社
- アルテ
- 種別
- 原典(アドラー本人の著作の翻訳)
- 難易度
- 上級 ★★★ ——本人の言葉と臨床例。足場を固めてから挑む一冊
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どんな本か——3行で
本書は、アルフレッド・アドラーが晩年に一般読者へ向けて書いた代表作の翻訳です(原題 What Life Should Mean to You)。専門家向けの理論書ではなく、人生の悩みを抱えた普通の人に向けて、劣等感、家族や学校での経験、職業・交友・愛という人生の課題、そして共同体感覚を、平易な語り口と豊富な事例で説いています。『嫌われる勇気』で紹介された発想の多くが、ここに源泉を持ちます。訳者は対話ベストセラーの著者でもある岸見一郎で、アドラーの思想を長年読み解いてきた訳文の信頼性も本書の魅力です。
核心——「人生の意味」は貢献のなかにある
本書を貫く問いは、タイトルどおり「人生の意味とは何か」です。アドラーの答えは明快で、人生の意味は他者への貢献のなかにあるというもの。あらゆる悩みは対人関係のなかで生まれ、あらゆる解決もまた、自分だけの関心から他者への関心(共同体感覚)へと向きを変えることのなかにある——本書はこの一点を、さまざまな角度から論じ続けます。
そこへ至る道具立てとして、アドラーは劣等感(誰もが抱く、より優れたいという感覚。うまく働けば成長の原動力になるが、こじれると劣等コンプレックスや優越コンプレックスになる)、ライフスタイル(幼少期に形づくられる、その人固有の生き方の型)、そして早期回想や夢の分析といった臨床の技法を示します。抽象論だけでなく、問題を抱えた子どもや大人の具体的な事例が数多く挿入されるので、概念が生きた人間の姿として立ち上がってくるのが、原典ならではの読み応えです。
人生の意味は、自分一人のためにあるのではない。他者に関心を持ち、全体への貢献のなかに自分の居場所を見いだすとき、はじめて人生は意味を持つ。(本書の主張を、編集部が要約したもの)
——『人生の意味の心理学』の見取り図(編集部による大意)
読みどころ3点
1. 対話本の主張が「源泉」で裏づけられる
目的論も共同体感覚も、ここでアドラー本人の言葉として確認できます。「あの発想は、確かにアドラー自身のものだったのか」を自分の目で検証できる、これが原典を読む最大の喜びです。
2. 豊富な臨床例が概念に血を通わせる
子ども・家族・患者の具体的なケースが次々と語られ、劣等感やライフスタイルが机上の概念でなく、生きられた現実として理解できます。臨床家アドラーの観察眼が光ります。
3. 平易な語り口——原典なのに読める
一般読者向けに書かれているため、哲学の専門書のような晦渋さはありません。足場さえ整えてあれば、原典としては驚くほど親しみやすく読み進められます。
留意点と読み方
本書は原典だけに、いきなり最初の一冊にするのはおすすめしません。臨床用語や当時の事例が並ぶため、目的論・劣等感・共同体感覚・ライフスタイルといった枠組みを持たずに開くと、話の狙いを見失いがちです。理想は本棚の順番どおり、対話本で全体像を、体系入門で枠組みを固めてから本書へ進むこと。そうして読めば、これまで「岸見・古賀の解釈」として受け取っていたものが、どこまでアドラー本人に由来するのかが見分けられるようになり、理解が一気に立体化します。逆に言えば、『嫌われる勇気』だけで「アドラーを読んだ」とせず、最後にこの原典まで来てこそ、アドラー学習は一周します。読了目安は約8時間、じっくり味わう価値のある一冊です。
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