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『シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー』書評——本人の言葉に、最短で触れる
★★★★★5.0 / 5.0(編集室評価)
結論: ヴェイユの最初の一冊はこれです。工場労働・不幸・注意・神への希求まで、彼女の射程を本人のテクストの精選で一望できる入口。研究者・今村純子の編訳と導きが付くので、いきなり断章集に潜って溺れる前に、安全な水深でヴェイユの声に触れられます。文庫で持ち歩けて、「難しそう」という思い込みをほどく一冊です。
- 書名
- シモーヌ・ヴェイユ アンソロジー
- 著者
- シモーヌ・ヴェイユ
- 編訳
- 今村純子
- 出版社
- 河出書房新社(河出文庫)
- 形式
- 文庫
- 難易度
- 入門〜中級 ★★☆ ——本人の言葉だが精選で読みやすい
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どんな本か——3行で
ヴェイユ研究者の今村純子が、ヴェイユの膨大な著作・手記のなかから要所を選び、自身の訳と解説で案内する一冊です。工場日記、労働と抑圧、不幸(malheur)、注意(attention)、美、神への希求といった主題ごとに、彼女のテクストが精選されています。分厚い原典に直行するのではなく、精選という「浅瀬」から入れるように編まれた、初学者のための入り口です。
核心——精選という親切
ヴェイユ入門の難しさは、二つの極に分かれがちなことにあります。解説書だけを読むと分かった気になるが本人の文章に一度も触れない。かといって『重力と恩寵』のような断章集に直行すると、脈絡の見えない箴言のあいだで迷子になる。本書はその中間に橋を架けます。本人のテクストを、初学者が溺れない分量で切り出し、編訳者の導きで受けとめる。この配慮のおかげで、ヴェイユの思考の手触り——「注意」を一つの倫理にまで高め、「不幸」を安易な慰めで覆わないあの厳しさ——を、安全な水深で体験できます。ここで一度その呼吸をつかんでおくと、後で代表作に入ったとき、はじめて読む断章なのに「知っている感触」があるはずです。入門でありながら、原典読解への確かな助走になっているのが本書の美点です。
読みどころ3点
1. 射程の広さを一冊で見渡せる
労働論から神秘思想まで、しばしば「別人か」と思うほど幅のあるヴェイユの仕事を、一冊で横断できます。自分がどの主題に惹かれるかが分かるので、次にどの原典へ進むかの指針になります。
2. 編訳者の導きで迷子にならない
ただ抜粋を並べるのではなく、研究者の訳と解題が付きます。難所には手すりがあるので、断章の断片性に押し流されず、一つひとつの言葉の重みを受けとめられます。
3. 文庫で携帯できる
河出文庫の一冊なので、鞄に入れて細切れ時間に進められます。「まとまった時間がないと読めない」という原典の心理的ハードルがありません。
注意点
二点。第一に、本書はあくまで入口を作る本であり、これ一冊でヴェイユを「読んだ」ことにはなりません。精選で心を惹かれた主題は、必ず原典(まずは『重力と恩寵』)で受けとめてください。第二に、選ばれるテクストと配列は編訳者の視点を通ったものです。編集の意図に沿った一つの「入口」であることを踏まえ、生涯の全体像は訳者の異なる評伝『シモーヌ・ヴェイユ』で補うと、より立体的になります。
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