『はじめてのスピノザ』書評——「自由」とは、意のままに選ぶことではない
★★★★★5.0 / 5.0(編集室評価)
結論: スピノザを一冊だけ読むなら、これです。「自由とは、何でも好きに選べることではなく、自分の本性にかなって能動的に活動できること」——スピノザ哲学の核心を、講義の語り口で一段ずつ腹落ちさせてくれる入門書の決定版。〈神即自然〉も、必然と自由の関係も、難しい用語に頼らず日常の例で説明されるので、原典に挑む前の足場として最良の一冊です。
- 書名
- はじめてのスピノザ 自由へのエチカ
- 著者
- 國分功一郎
- 出版社
- 講談社(講談社現代新書)
- 形式
- 新書
- 難易度
- 入門 ★☆☆ ——最初の一冊に最適
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どんな本か——3行で
本書は、スピノザの主著『エチカ』のエッセンスを、「自由」というひとつの主題に絞って読み解く入門書です。放送の講義がもとになっているため語り口はきわめて平易で、哲学の予備知識がなくても読み進められます。〈神即自然〉という有名なテーゼから始め、コナトゥス(自己を維持しようとする力)、感情の仕組み、そして「自由とは何か」という結論へと、一本の道筋で案内してくれます。
核心——自由は「能動」である
私たちはふつう、「自由」を「何でも好きに選べること」だと思っています。しかしスピノザは、そんな自由意志を認めません。すべては神=自然の必然のなかで起きるからです。ではスピノザにとって自由とは何か。國分の説明によれば、それは自分の本性(コナトゥス)にかなって、外から振り回されずに能動的に活動できている状態のこと。悲しみや憎しみのような受動的な感情に流されるほど人は不自由になり、物事をよく理解して自分の力で動けるほど自由になる——この「必然のなかの自由」という逆説が、本書の一番おいしいところです。難解に見えるスピノザの一元論が、生き方の指針として立ち上がってきます。
読みどころ3点
1. 「自由意志の否定」が怖くなくなる
自由意志を否定すると聞くと、宿命論のように感じられます。本書はそこを丁寧にほどき、「必然を理解することがむしろ自由につながる」というスピノザの発想を、納得できる形で手渡してくれます。
2. コナトゥスという鍵を手に入れる
コナトゥス(自己保存の力)という一語を得ると、感情も倫理も一気に見通しがよくなります。以後『エチカ』の原典を開いたとき、この概念が読解の羅針盤になります。
3. 講義口調で最後まで走れる
新書一冊、語りかける文体。通勤や休日の数時間で読み切れる分量でありながら、スピノザ哲学の骨格をきちんと押さえてくれるバランスが見事です。
注意点
二点。第一に、本書はあくまで『エチカ』の「自由」という側面に光を当てた入門であり、原典そのものではありません。スピノザ本人の主著は『エチカ』であることを忘れず、入門で足場を固めたら必ず原典へ進んでください。第二に、政治や宗教をめぐるスピノザのもう一つの顔(『神学・政治論』など)は本書の射程の外です。全体像をもう一段深めたいなら、同じ著者の『読む人の肖像』へ進むのが自然です。
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