『デカルト入門講義』書評——『省察』を開く前の、最良の予行演習
★★★★☆4.2 / 5.0(編集室評価)
結論: 『省察』を読むと決めた人の直前の一冊として推薦します。京大での講義をもとにした「です・ます」調で、『省察』を第一省察から順に読み解いていく構成。主著の難所——特に「デカルトの循環」——を、先回りして解毒してくれます。
- 書名
- デカルト入門講義
- 著者
- 冨田恭彦
- 出版社
- ちくま学芸文庫(2019年)
- 形式
- 講義形式の解説・326頁
- 難易度
- 中級 ★★☆ ——語り口は平易・議論は本格的・約7時間
Kindle版あり/価格・在庫はAmazonの商品ページでご確認ください
どんな本か——3行で
ロック研究などで知られる哲学者・冨田恭彦が、京都大学での講義をもとに書いた「です・ます」調のデカルト入門です。生涯の章のあと、主著『省察』を第一〜第三省察、第四〜第六省察と順に読み解き、自然学との関係、循環問題、現代哲学への接続まで進みます。解説書というより「『省察』の読み方の講義」です。
核心——『省察』の読み方を先に学ぶ
『省察』は六日間の瞑想という形式で書かれた、読者が語り手と一緒に疑い、一緒に確実性へ登る本です。この形式は美しい反面、独学だと「いまどの段階の議論にいるのか」を見失いやすい。本書の価値は、その進行表を先に渡してくれることにあります。
特に第三省察以降——神の存在証明と「明晰判明の規則」の関係——は、独学の脱落ポイントです。本書は「神の誠実さが認識の保証になるなら、その神の証明自体は何が保証するのか」という「デカルトの循環」問題を正面から扱い、歴代の解釈まで整理します。難所を難所と明言してくれる入門書は、信頼できます。
読みどころ3点
1. 講義調の語りがもたらす伴走感
「です・ます」の語りは、単に易しいのではなく、論証の一歩ごとに「いま何をしたのか」を確認しながら進むリズムを作ります。『省察』の梯子を一段ずつ登る予行演習として、この形式は効きます。
2. 自然学に支えられた形而上学、という視点
『世界論』『人間論』を踏まえ、形而上学が自然学の基礎づけであることを講義の中盤で押さえます。小林道夫『デカルト入門』と同じ結論に別の道筋で到達するので、両方読むと理解が立体になります。
3. 分析哲学への接続
最終盤で、デカルト的な「観念の哲学」がロックを経て現代の分析哲学まで流れ込む水脈を示します。デカルトが「終わった哲学者」ではなく現役の論争の源泉であることがわかる、視界の開ける締めくくりです。
注意点
二点。第一に、326頁と入門書としては厚く、語り口の平易さに反して議論の密度は高いです。第二に、本書の中心は『省察』読解なので、『方法序説』も自然学も含めた全体像を先に一望したい人は、『デカルト入門』を先に読むほうが順路として素直です。当サイトのロードマップでもその順序を採っています。
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