『方法序説』書評——原典から入れる、まれな哲学者の最初の一冊
★★★★★4.6 / 5.0(編集室評価)
結論: デカルトの最初の一冊はこれです。迷う要素がありません。本文100頁余・自伝調・近代哲学の出発点——この三拍子が揃った原典は哲学史に他にほぼ存在しません。「われ思う、ゆえにわれあり」を、解説書の要約ではなく本人の語りで確かめてください。
- 書名
- 方法序説
- 著者
- ルネ・デカルト/谷川多佳子 訳
- 出版社
- 岩波文庫(1997年)
- 形式
- 原典・全6部(原著1637年)
- 難易度
- 入門 ★☆☆ ——本文100頁余・約3時間(第4部のみ骨あり)
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どんな本か——3行で
17世紀、すべての学問を疑い直した男が「確実な知識に至る方法」を自分の人生に沿って語った書物です。正式の書名は「理性を正しく導き、諸学問において真理を探求するための方法の序説」。当時の学術語ラテン語ではなく、あえて誰にでも読めるフランス語で書かれました——つまり最初から一般読者向けに書かれた哲学書なのです。
核心——なぜ「最初の原典」たりうるのか
理由は形式にあります。本書は体系の講述ではなく、知的自叙伝です。学校で学んだすべてに失望した青年が、書物を捨てて「世間という大きな書物」へ旅立ち、やがて炉部屋の思索で方法の規則をつかみ、すべてを疑った果てに一つだけ疑えないものを見つける——。
私がこのようにすべては偽であると考えている間も、そう考えている私自身は必然的に何ものかでなければならない。「私は考える、ゆえに私はある」というこの真理は、懐疑論者のどんな途方もない想定によっても揺るがしえない。
——『方法序説』第4部の論旨要約(編集室訳)
物語として読めるのに、読み終えると近代哲学の土台——方法的懐疑、コギト、心身二元論——が一通り手元に残ります。この「物語の読みやすさ」と「内容の重要度」の比率は、哲学の原典として破格です。
読みどころ3点
1. 第1部——学問への率直すぎる失望
名門校で当時最高の教育を受けた男が「得たものは、自分の無知の自覚だけだった」と語り出します。この率直さが本書全体のトーンです。400年近く前の人の悩みが、現代の私たちの学び直しの悩みとそのまま重なります。
2. 第2部——たった4つの「方法の規則」
明証・分析・総合・枚挙。デカルトが数千の論理学の規則を4つに圧縮したこの部分は、現代の問題解決の作法の原型です。哲学に興味がなくても、ここだけで元が取れます。
3. 第4部——コギトと神の存在証明
本書の頂上であり、唯一の難所です。ここだけは自伝調から哲学の密度に切り替わります。初読で全部わからなくて構いません——ここで詰まった感覚こそ、解説書(『デカルト入門』)へ進む最良の動機になります。
注意点
二点。第一に、上記の通り第4部は初読では難しいです。わからないまま先へ進んで大丈夫です(第5部・第6部はまた読みやすくなります)。第二に、本書は『省察』の予告編という側面があります。コギトや神の存在証明の本格的な展開は『省察』で行われるので、本書だけでデカルトの形而上学を判断しないでください。
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