『ペスト』光文社古典新訳文庫 書評——読みやすい新訳という、もうひとつの選択
★★★★★4.5 / 5.0(編集室評価)
結論: これは2位『ペスト』(新潮文庫)と同じ作品の、新しい別訳です。物語そのものの評価は新潮文庫版と変わりません(作品としての詳しい書評は新潮文庫版のページをご覧ください)。本ページで比べるのは「訳文」です。フランス文学者・中条省平による本訳は、現代語として読みやすく、初めて『ペスト』に触れる人にも入りやすいのが持ち味。ただし、初読なら定訳と本書のどちらか一方で十分。両方を買う必要はありません。
- 書名
- ペスト(光文社古典新訳文庫)
- 著者
- アルベール・カミュ
- 訳者
- 中条省平
- 出版社
- 光文社(古典新訳文庫)
- 形式
- 文庫
- 難易度
- 中級 ★★☆ ——新訳で読みやすい
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どんな本か——3行で
作品はカミュの長編『ペスト』——封鎖された街の疫病を舞台に、逃げず英雄ぶらず持ち場で闘う人々を描いた、不条理と反抗の物語です。物語の内容は新潮文庫版(宮崎嶺雄訳)とまったく同じで、違うのは「どの日本語で読むか」だけ。本書は光文社古典新訳文庫の一冊として、フランス文学者・中条省平が新たに訳し下ろした版です。作品そのもののあらすじ・主題は新潮文庫版の書評ページで詳しく解説していますので、本ページは「訳の選び方」に絞ります。
核心——新訳の意味
「古典新訳文庫」は、名作を現代の読者にとって読みやすい日本語で訳し直すことを掲げるシリーズです。半世紀以上前に訳された定訳は、格調がある一方で、言い回しがやや古く感じられることもあります。本書はそこを現代語の感覚で訳し直し、初めての読者が引っかかりにくいようにした版です。訳者の中条省平はフランス文学・映画・マンガ評論などで知られる書き手で、読者を置き去りにしない明快な文章に定評があります。ただし、どちらが「正しい」訳という話ではありません。格調を取るか、読みやすさを取るか——好みの問題です。同じ物語でも、訳文の呼吸が変わると印象が変わる。その面白さを試せるのが、名作に複数の訳がある利点です。
どちらの訳を選ぶか3点
1. 読みやすさ重視なら本書(光文社)
現代語に近く、初めて『ペスト』を読む人が物語に入りやすいのが本書の持ち味。とにかくつまずかず読み通したい人に向きます。
2. 格調・定番を取るなら新潮文庫
新潮文庫(宮崎嶺雄訳)は半世紀以上読み継がれてきた定訳。落ち着いた格調を好む人、多くの人が読んできた版で読みたい人はこちらを。
3. 迷ったら試し読みで比べる
冒頭の数ページを読み比べれば、自分に合う訳はすぐわかります。KindleサンプルやAmazonの試し読みで、両方の“声”を聞いてから決めるのが確実です。
注意点(重複購入を避ける)
最も大切な注意点です。本書と新潮文庫版『ペスト』は、同じ作品の別訳です。ストーリーは同一なので、初めて読む方が両方を買う必要はありません。どちらか一方を選んでください。すでに新潮文庫の定訳で読んだ人が「別の訳者の日本語で、もう一度あの物語を味わいたい」というときには、本書は良い再読の選択肢になります。逆に、まだ『ペスト』を一度も読んでいないなら、読みやすさか格調かの好みで一冊だけ選ぶ——それが賢い買い方です。
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